世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「オバマ優勢」は本当か?


f0166919_17233263.jpg

 ブッシュ大統領は、二人の次期候補者を呼んで、金融危機救済策を決めたのだが...


米国大統領選挙・経過(4)                    山上 真

 選挙戦が本格化してから、ほぼ一か月経った。当初は、マケイン陣営が,副大統領候補者として「異色の」ペイリン・アラスカ知事を擁立したことが話題を呼んで、支持率を上げていたが、九月中旬以降、経済危機が表面化するにつれて、形勢は劇的に変わって来ている。以下に事実経過を纏めてみた。                    
f0166919_17274922.jpg


f0166919_17294955.jpg
       
 
 ペイリン候補の「名演説」の後、ワシントン・ポスト紙/ABC Poll 47/46 でオバマ優勢とする。しかし、他の多くの世論調査では、49/44 でマケイン優勢。                                     (9月10日)                           
 オバマ氏、「豚に口紅を塗るようなもの」で、マケインの言う「改革」に実体が無いことを批判したのに対して、「ペイリンを侮辱するもの」と共和党側非難する。
                              (9月10日   (仏)保守系フィガロ紙:フランス人の80%はオバマに投票する。(9月11日)                               
 オバマのTV広告:マケイン氏への攻撃「マケインは変化を口にしながら、コンピュータも使わなければ、e-mailも送らない」(9月12日) 

Gallup調査: 48/45でマケイン優勢             (9月12日)
                             
 この所、ABC TVによるペイリン・インタヴューの内容について、各局共に、話題に取り上げている。無駄な投資計画 'bridge to nowhere' に賛成した問題。 ペイリンの家庭生活と副大統領候補受諾の問題:女性の声「私だったら受けないわ」ペイリンの姿勢が改めて問われる。'Bush Doctrine' 「米国の安全が損なわれる恐れが出てきた場合、先制攻撃も辞さない」の内容を問われて答えられなかったこと。これまで海外体験が乏しい事。グルジア問題で、ロシアと'War' も辞さないという強硬な姿勢を見せたこと。地球温暖化を、これまで人為的でないという呆れた認識を持っていたが、これを変更し、「人為的かもしれない」とした。        (9月11日)

f0166919_17355722.jpg

  セイラ・ペイリン共和党副大統領候補とチャーリー・ギブソンABC Presenter

 メディアの間で、ペイリン候補のような経験不足の人物が、大統領になった場合の問題について懸念が広がっていることを伝えている。特に男性 radio-presenter の間で。

 9月8日 Newsweek誌世論調査、オバマとマケインは同じ支持率とする。
各紙で、ペイリンの主張「クエートからイラクに入った』は、嘘であったことが判明した。現地軍関係者の証言による。

 NHK:民主党ロスチャイルド女史、鞍替えして、マケイン支持を表明。「オバマは政治を知らない」とする。                 (9月19日)

 FOX radio:高校教師が教室での政治討論で,偏向した教え方をした。「マケイン・ペイリンを批判した」という男女二人の言い分を詳細に披露。
FOX は公正・客観放送と装っているが、番組の合間に頻繁に、民主党又は、オバマの主張を批判する決まり言葉を流す手法をとって、マケインへの肩入れをしている。例えば、「大抵のアメリカ人にとって、イラクのことは消えちゃっている」とする。「イラク」は、もう解決済みだという訳だ。オバマの反イラク戦争姿勢を意識したものであることは明らか。
 オバマ税制・経済政策を社会主義的とする言説しきりに流す。(9月20日)

 マケイン氏、ブッシュ大統領の「不良債権を買い取って,市場から一掃する」という方針から距離を置こうとする。               (9月20日)
 
f0166919_17381231.jpg


 九月中旬に米国で起こった経済破局によって、マケインの経済問題での主張「US Fundamentals are strong」(米国の経済実体は強力だ)は、根本的に間違っていたことが証明された。

 KGO-AM radio: ペイリン夫妻が、「Trooper事件」(注)で証言を拒否していることは極めて問題だ、と怒る。「約束違反。副大統領候補として、あってはならぬこと」                               (9月20日)
 各種世論調査 オバマ、マケインに対して、2〜5%リードしている。「ペイリン効果」終わりとする。                   (9月20日)

 この所、双方の副大統領候補者の適格性について、疑問が呈されている。オバマ氏の副官バイデン氏は、大恐慌の原因となった1929年の株価大暴落当時の大統領がフーバー氏だったのに、「ルーズベルト大統領時代に 'TV' で・・・」などと相当アナクロなことを言ったりしている。自ら、自分より、ヒラリー候補の方が副大統領に相応しかったと述べてもいる。

 一方のペイリン候補については、保守系コラムニストKathleen Parker女史が、「最初は素晴らしい候補と思ったが、幾つかの彼女のインタヴューを見て、やはり副大統領としては相応しくないという結論に達した。彼女は、幼子を守る為にも、家庭に戻るべきだ」と語っている。(National Review)
CBS News のKatie Couric女史のインタヴューを受けた中で、「ロシアの脅威」に就いてなどの質問に答えられず、どんな新聞を日頃読んでいるか、という問いにも、一紙として名を挙げることが出来なかったそうだ。
 流布している風刺ヴィデオ 'Saturday Night Live' でも、彼女の発言が笑い物になっており、マケイン候補にとって、深刻な「お荷物」になってきているようだ。
 
 KGO-AM radio: 女性キャスター及び聴取者の多くが、ダウン症の幼子を抱えたペイリン候補は、家庭に戻って世話をするべきだ、副大統領職とは到底両立し得ない、としていた。                          (10月1日)

 NHK 衛星『地球特派員2008』(20/09)10:10: 黒人差別感情と、宗教的要素に焦点を当てた,比較的公正な番組であったが、惜しい事に、取材時点が大分以前のもので、8月末の支持率を出していたのには驚いた。「マケイン有利」という印象を与えるものであった。

 テレビ東京 日高義樹『ワシントン・レポート』は、一応民主・共和両党にインタヴューしていたが、一般に「無能」と烙印の押されたクエール元副大統領との対談を長々とやっていた真意が理解できない。オバマは外交面で経験不足として、「マケイン勝利」を予測していたが、これも唐突な感じで、最初からの番組意図を窺わせる。既に大問題になっている 9月中旬の「経済混迷」を全く語らず、経済新聞系のテレビの名が恥ずかしい。結局、NHKの場合と同様で、情勢展開に追いつかない取材活動のお粗末さを暴露している。                      (9月21日)

f0166919_17464578.jpg


 9月20日、パキスタン・イスラマバードのマリオット・ホテルが爆弾テロに見舞われて、55人以上の死者と200人以上の負傷者を出した。イエーメンの米国大使館でのテロに続いての米国施設を目標とした事件の頻発は、ブッシュ氏の言う「アルカイダ・テロに対する勝利」が如何に空虚なものであるかを示している。


f0166919_1742322.jpg



 9月27日、テレビ公開討論会、ミシシッピー大学で行われる。経済危機、イラク、イランなどがテーマとなる。
 過去4回大統領選に出て、場慣れしているマケイン氏の老獪ぶりが窺われる。それぞれの問題の、彼の唱えてきた解決策は、大体に於いて間違っている訳であるが、説明の仕方が丁寧で,説得力があるように取られる。経験の強みを前面に出している。

f0166919_17435752.jpg


 オバマ氏は、もっと具体例を使って、分り易く述べるべきだ。彼がアフガンに兵力を集中するべきだと語っているのは、理解出来ない。「イラクの愚」を場所を変えて繰り返すだけだからだ。夥しい戦死者が出ることを、気にしないのか。ビン・ラディンを倒すためには、やはり、どんな犠牲でも払おうということなのか。こうなると、ブッシュと然程変わらぬことになる。テロを無くすには、武力を行使するだけでは、取合えずの解決を目指すだけで、根本的な解決からは程遠い。そこの理解が欠けているのは残念だ。仮にオバマ政権が誕生したとしても、このままだと、「オバマ政権打倒」の為のアフガン反戦デモが荒れ狂うことになるかも知れない。マケインもオバマも共に、アフガニスタンでの実情を分っていない。アフガン民衆が今や、米軍・NATO軍を嫌って、むしろタリバンに近づいているという現実をどうするのか、よく考えるべきだ。

f0166919_17405318.jpg

  「(銀行の債務を帳消しにするのなら)私のも帳消しにして!」

  共和・民主両党の協力で、75兆円規模の税金を投入した「不良債権買い取り」という非常措置を決めたことで、米国民の少なからずの人々が、不満を抱き、「第三政党」出現を待望していることが、Gallup調査で明らかになった。このことは、オバマ、マケイン両氏の戦いに、微妙な影響を及ぼす可能性がある。特に、変革の必要性を強く訴えてきたオバマ氏は、既存体制に妥協したと看做され、彼に投じられる筈だった票の一部を、大統領選立候補を表明している消費者運動家ラルフ・ネイダー氏に奪われる恐れがある。
 
 9月28日の時点では,50%対42%でオバマ氏が優位に立っている。(Gallup)
通常、マケイン氏評価が高い 'Zogby' 調査も、初めてオバマ氏が47.1%で、45.9%のマケイン氏より僅かながら優位に立っているとしている。

 9月28日、バグダッドで二件の爆弾テロ事件があり、34人死亡、約100人が負傷したことを29日10時のNHKニュースが伝える。米国メディアで確かめた所、New Orleansのラジオ局は全く触れず、ABC news、New York Times、Washington post、でも記事見当たらず、CNN news のみが下の方に小さく書いていた。これでは、イラクの実情が正しく伝わらない恐れがある。結果的には、マケインの、「米軍イラク大量派遣は成功しつつある」という、根拠の薄い主張を支持することになる。

 9月29日KGO radio 男性キャスター:マケイン候補の首尾一貫していない最近の態度を厳しく批判。ウォール・ストリートの危機について、選挙戦を一方的に中断、オバマ候補にも呼びかけて、26日の公開討論会を延期させようとした。ワシントンに乗り込んでのブッシュ氏主宰の会議では、具体的な提案を一言も発することがなかった。未だ決着も着かないのに、今度は一転、「問題が解決した」として、討論会に出ることに決めた。非常に不可解な動きだった、とする。

 10月1日 KGO-AM radio 男性キャスター:マケインを叱責する。「とんだ『判断ミス』でペイリンを選んでしまった。彼女は、毎日トンチンカンな言動をしている。自分のことが全く分かっていない『子供』だ。それを副大統領に選ぶなんて!見ていられない。ただ、微笑と美しいだけだ。君は、馬鹿で、とんまだ。人間性への冒涜だ」
こうした対応と、TV討論での印象から、オバマが8ポイント程、リードを拡げる結果となったのは当然だとする。
 確かに、討論会では、オバマ候補の慣れの不十分さが目立ったが、そうした欠点を上回って、マケインの経済政策、イラク問題の間違った対応が失点となっている。
猶、ブッシュ大統領の支持率が、17%と、最低を記録している。

 ウォール・ストリートの株価、9月29日、777$余り、約7%暴落した。議会下院が、約20票差で「負債買い取り法案」を否決した為だ。共和党の三分の二以上の議員が、「税金を使って高給取りの株屋や銀行家を救済するのに反対」として、ブッシュ案に造反した。この影響を受けて、世界的に株価が4〜6%下落した。このままで行くと、本当に世界恐慌に陥るかも知れないと、専門家も懸念している。

f0166919_17534286.jpg


英国は、250万人の顧客を持つ住宅貸し付け大手の 'Bradford & Bingley' を、 欧州では、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルグ三国が 112 億ユーロを注ぎ込んで、銀行 'Fortis' を 国有化すると発表した。(9月29日)

ニューヨーク株式、485$回復。ブッシュ政権の「救済策」実現を当て込んでの動きとされる。         (9月30日)

f0166919_175555100.gif


 マケイン候補に対して若干のリードをしているオバマ氏にとって、依然として最後まで残る懸念は、人種的 barrier を如何にして克服出来るかということである。米国の都市部以外の地方では、未だに「黒人大統領なんてとんでもない」と公然と言い放つ白人男女が珍しくないし、メディアが白人候補者ペイリン女史の「知識不足」を厳しく叩くにつれて、恐らく同情心からだろうが、白人女性の支持がマケイン陣営に向かっているという調査もある。(ABC news )オバマ氏にとって、 5、6% 程度の差は、「零の差」と看做さねばならないのである。  
                               (2008.10.02)

<追記>
 10 月2日に行われた副大統領候補・公開討論会で、双方共に大したミスも無く終えることが出来たが、個別の問題を詳細かつ丁寧に説明し、ペイリン候補への個人攻撃を避けた「老練」バイデン民主党候補の方が、予想されたより上出来だったものの、質問に対して不十分な答え方しか出来なかったペイリン候補より、51対 36%で優勢という結果になった。(CNN緊急調査)

f0166919_10171738.jpg



<注>
KGO-AM radio: サンフランシスコなど西海岸を拠点とする局。(ABC News系)

Trooper事件:ペイリン・アラスカ州知事が、彼女の妹の元夫 Mike Wooten 氏
(アラスカ州警察官=trooper)を解雇するように指揮官の Walt Monegan 氏に「命令した」のに対して、それを無視した Monegan 氏をペイリン知事が解雇した、という「職権乱用」事件。現在裁判中。


<写真> The New York Times, The Washington Post, Los Angeles Times
The Daily Mail, The Daily Telegraph, The Guardian 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-10-02 17:59 | Comments(0)