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by shin-yamakami16

曙光が見えた「アフガン和平」

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日本は「給油」よりも民生援助を
                             山上 真

 この10月初めから、アフガニスタン戦争の平和的解決の動きが急に浮上してきている。主として英国メディアが伝えている幾つかの情報によると、カルザイ政権が真剣に、サウジアラビア政府の仲介で、タリバン代表者と「和平」をめぐって接触しているようである。このことは、日本の一部メディアも既に報道し始めている。

 今、アフガニスタンの状況はどうなっているのであろうか。
 英国紙『タイムズ』(10月5日)は、現在のアフガニスタンでの戦闘の一断面を次のように描写している。
 
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 「第2落下傘連隊は、第16空挺旅団の、他のどの部隊よりも多くの生命を失った。6月に全部で11人、1週間で5人という時もあり、10人の内1人の割合で仲間を失ったのである」
 
 <アンドルー・ラモント伍長の話>
 「12年間の知合いだった友人を何人も亡くした。他の者も手足を失っている」
 「つい最近の犠牲者は、カジャキ・ダムをタリバンの攻撃から守るパトロール中に路傍爆弾で死んだニッキー・メイスン軍曹だ。僅か数十メートル離れた所で爆発音を聞いたんだが、どうしようもないショックだ。帰営して、19年ぶりに煙草に火を点けたよ」 
 「アフガン南部ヘルマンドに、2年前に派遣された時、当時の国防相ジョン・リード氏は、一発の銃弾も発射することはないだろう、と述べたのだが、状況は全く異なっていた」

 <マーク・カールトン・スミス司令官の話>
「現在では、当時の2倍の兵員を擁し、英国が海外に派遣した軍隊の中でも最強の装備を誇る部隊だ」
 「しかし、タリバンも戦術を変えている。即製爆薬(IEDs) を度々使い、パキスタンのみならず、チェチェン、ウズベキスタンから外国人戦闘員を雇っている。更には、英・米軍によって訓練されたアフガン国軍からの逃亡兵を、月額90ポンドの戦闘手当の倍額を提示して募ろうとさえしている」
 「タリバンは、ますます不人気なカブール政権と、米英軍の誤爆による死傷者に対する民衆の怒りに乗じており、彼らが権力を握った時には、これまでの厳しい戒律を押し付けない、などと民衆に約束している」

 こうして、英国軍の作戦が一定の功を奏しているのにも拘らず、ヘルマンドの半ばが依然としてタリバン支配下にあり、その戦闘力は衰えていないというのである。
   
 最初に述べたように、アフガンでの全般的混乱を収拾しようとする動きが漸く表面化してきた。前述の英国軍現地司令官カールトン・スミス准将は、NATO軍のアフガンでの最終的勝利はあり得ず、唯一の前進的解決の道は、タリバンとの話し合いによる方法だと提言している。これは、10月6日の英国各紙が大きく報道したものである。
 
 米国防長官ロバート・ゲイツ氏は、カールトン・スミス准将の発言「西側の軍事的勝利は不可能」を、「敗北主義者」の言として非難している。しかし、ゲイツ氏も、アフガン政府と協同する用意のあるタリバン指導者との話し合いは必要だとしている。
 
 一方のタリバン側は、カルザイ政権を米国の「傀儡政権」と看做し、全ての外国軍が撤退しない限り、「和平」は不可能だとしている報道もある。(10月 5日、Daily Mail 紙)

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          Karzai 大統領と実弟 Qayoun 氏

 しかし、10月8日の『インディペンデント』紙、『テレグラフ紙』によると、カルザイ大統領が、実弟の Qayoun 氏を仲介者として、サウジアラビアでタリバン代表者と密かに「夕食会」で接触しているということだ。この事実は、英国も承知しており、和平実現後の「新政府」での、タリバン代表の閣僚などの「地位保証」にまで話が及んでいる模様だ。勿論、「アルカイダ」との関係断絶が前提である。
 
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          タリバン指導者の一人 Hekmatyar 氏
 
 一方、8日の『毎日新聞』は、アフガン副大統領カリム・ハリリ氏が、単独記者会見の席上、「タリバン最高指導者オマル師に対して、アフガン政府が和解交渉を開始した」と語ったことを伝えている。タリバン側が、「武装解除」・「憲法承認」などの条件をのめば、政治勢力として受け入れるということだ。
 こう見ると、幾つものルートで和平交渉が始まっていると思われる。紆余曲折は当然予想されるが、大いに期待したいものだ。

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            戦禍の中の女性と子供たち
  
 日本政府は相変わらず、米国との関係を基軸として、「給油活動再開」ばかり強調しているが、これでは近い将来を見通しているとは全く言い難い。こうしたNATO軍への物的支援は、誤爆などによるアフガン民衆への被害を齎すだけだ。
  日本政府・外務省は、急展開しつつある情勢を把握し、アフガン新政権の誕生を見据えて、「民生への直接支援」となるような方策を具体化するべきだ。そのことが唯一、アジア民衆の期待に応える道ではないか。 (2008.10.15)



<写真> The Guardian, The Daily Mail, The Daily Telegraph 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-10-15 17:08 | Comments(0)