世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

歴史的勝利の日から、新たな闘いへ


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オバマ勝利の意味

                             山上 真
 
  予測された勝利とは言え、バラック・オバマ米国大統領の誕生は、戦争と経済恐慌に苦しむ世界への、かけがえのない贈り物だ。彼は休むことなく、米国を震源とする全ての深刻な世界的諸問題、即ち、イラク・アフガン戦争、サブプライム問題に発する経済・金融恐慌、更には地球温暖化問題に対して、どのような根本的解決策を用意できるかという緊急課題に立ち向かわなければならない。選挙中にもよく指摘されたことであるが、未だ若いオバマ氏は、外交問題,経済問題などで決して十分な知識・見識を持ち合わせているとは言い難い。新たに学びつつ、しかし早急に、米国の諸政策を立て直さなければならない。そのことを、米国民ばかりでなく、世界諸国民が期待しているのである。
オバマ氏は、シカゴでの勝利演説の中で、マケイン氏の私心のない、立派な戦いを讃え、多くの共和党支持者の声に耳を傾ける姿勢を強調した。そして、一つの偉大な国を築く為に、新たな夢を実現する為に、全ての人々が協調して、難局に当たることを呼びかけた。マケイン氏も、アリゾナでの「敗北演説」の中で、オバマ氏の健闘を賞讃し、選挙中の激しい対立を乗り越えて、協力して行く意思を明確にした。
 オバマ氏の勝因については、「経済が人種問題を超えた」ことを挙げる人々が多いが、それは間違いではないにしても、それだけではないと思われる。簡単に言えば、草の根の市民運動から始まったオバマ氏の献身的人間像、ミシェル夫人を含む家族の雰囲気など、その個人的魅力が大いに闘いの行方を左右したであろう。

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米国大統領選挙・経過 (6)

FOX radio (22/10) :オバマが「麻薬をやっていた」話を蒸し返す。確か、去年の段階で、オバマが「若気の至り」で謝っていたこと。'BARACK OBAMA's Cocain
Days' 「African American President としては重大問題だ」とする。

Gallup調査 :世界70カ国での世論調査。64カ国でオバマ支持率がマケインを上回り、欧州ドイツ、フランス、英国で60%、日本でも66%対15%でオバマ圧勝の形。
興味深いのは、オセチアに侵攻したグルジアは、マケインが 23% 対15% で上回った。(朝日新聞 10月23日)

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ペイリン副大統領候補が、1500万円使って、高級服の「着せ替え人形」になっていることが、NHKを含む世界各国メディアで報道される。資金源の共和党は、この報道に当惑しているようだ。やはり共和党は、国民の貧しさとは無縁の思想を持つ「金持ち政党」だ。
 更に、アラスカからニューヨーク迄の子供同伴費用を州政府に負担させていたことが判明した。
 こうした非常識な行動によって、女性の好感度が54%下がっている。
 (毎日新聞 10月23日)

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マケイン陣営の運動員女子学生(白人)、自傷事件を起こし,それを「黒人による傷害事件」のように僭称したことが,明るみに出た。(10月25日、東京新聞)
 恐らく、この女子学生は、自陣営の旗色の悪さに危機感を抱いて,このような事件によって,「黒人の犯罪」をアピールし、少しでも同色のオバマ候補を叩こうと図った,幼児的行動と思われる。マケイン陣営の混乱を象徴するような茶番劇だ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙社説、「オバマを米国大統領に」と、支持を表明。
「この困難な時代にオバマを選択することは正しい」とする。(10月24日)

FOX radio :各種世論調査で、オバマとマケインの支持率差が、9 〜15% と、更に広がっている。
ペイリン候補の、共和党資金を使った華美な服装問題、党選挙スタッフとの「*記者会見」をめぐる軋轢、アラスカでのスキャンダルなどがじわじわと響いてきている。 

再び、オバマ暗殺計画発覚。白人至上主義者の若い男二人(テネシー、アーカンソー州出身)が、オバマ氏と黒人多数を、高速運転の車から無差別銃撃を企てた。27日、米司法省が二人を逮捕し、公表。

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米国北東部で雪が降り始めているということだ。ニューヨークは4度C、風景を見ると、如何にも寒そう。この寒さの中での選挙戦、両候補にとって最後の過酷な闘い、特に苦しいマケイン候補には悲壮感が漂う。(10月28日)
 有利に進めているオバマ候補は、勝利が確実だという「楽天主義」を戒め、最後の一瞬まで、票固めをするよう訴えている。一方、マケイン候補は、「やっぱり駄目か」という悲観主義に陥ることなく、「立ち上がって,立ち上がって!」と必死に訴えている。

FOX radio : マケイン候補が、ペンシルバニア州で、これまで10%以上、オバマ候補にリードされていたのが、4%に迄追いついていることを伝える。(10月31日)
 このFOXは,しょっちゅう、このような「マケイン激励」のメッセージを流している。

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ロサンゼルス・タイムス紙:ミズーリ州は、圧倒的に共和党地盤であるが、オバマ陣営は、頻繁な戸別訪問、及びTV広告に依って,精力的に票の掘り起こしに努めている。人口の80%以上が白人で、ブルー・カラーの労働者層が厚い当地では、民主党支持者さえも、「もし、オバマが白人なら、問題なく彼に投票するのだが」と語る。迷うのは、人種的要素に加えて、株価暴落、雇用不安などの経済的危機の解決を誰に託せるかという問題である。民主党・オバマ候補の方が適格と分っていても、やはり人種問題が心理的に付きまとう。         
 セントルイスのGateway Archでの「オバマ演説会」には、10万人が集まった。                               
                              (10月31日)
     
FOX radio : 「ハリウッドの映画界の多くが、オバマ支持であるが、中には、マケイン支持の人々もいる。そのような女優の一人は『オバマは共産主義者で、キューバのカストロのように振舞うだろう。ペイリンは、面白くていい』と述べる」
 若い女優は、この程度の認識しか持っていない。流石に、FOXラジオの解説者も失笑していたが、マケイン支持者の知的レベルの低さは、目を覆うばかりだ。
 
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                            (11月1日)
Gallup poll:オバマ、マケインの支持率差、52%対41%で、広がる。
Zogby は、オバマが支持を増し、マケインは滑り落ちつつあるとする。
                             (11月1日)
NPR News : アリゾナ州で、リードしているマケイン候補が、次第にオバマ候補に
追い付かれてきている、とする。              (11月1日)

ニューヨーク・タイムズ紙 : 消費者の購買力激減によって、価格失墜、投資窒息、を招き、数年に渉って雇用悪化する、デフレーションの「幽霊」が徘徊している。
                             (11月1日)
英国ガーディアン紙:オバマ候補の叔母が「不法移民」で、彼女が「違法に」オバマに総額$260の寄付をしていることが明るみになり、投票日を4日後に控えて、マケイン陣営の恰好の攻撃材料になる事が懸念される。(11月2日)

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英国テレグラフ紙:英国で最も古い「梵火祭」(東サセックス・ヘイスティングズ)で、機関銃を抱えた 'RAMBO' 姿に作られた米副大統領候補セイラ・ペイリンの大人形が、火炙りにされるという。ペイリンの「銃規制反対」の態度を批判的に象徴させたもの。(11月2日)

ペイリン副大統領候補、電話でフランス大統領サルコジを騙ったカナダ・ケベック「ユーモリスト」の罠に嵌る。「ヘリから狩りをしようよ」、「ええ、そうしましょう」と言った調子。                  (11月1日)

FOX News : 相変わらず、オバマが「PLO (パレスチナ解放機構)の友人だ」とか、「マルクス主義者だ」というような放送を流す。
 彼が、「テロリスト」だという印象を与えることに躍起だ。オバマ候補の「叔母不法滞在」問題も、しつこく触れて回る。(11月3日)

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USA TODAY 紙:各種世論調査結果を発表。いずれもオバマ優位で一致する。
 Gallup: 52/41 Research2000/Daily Kos: 51/44 Rasmussen: 51/46
Diageo/Hotline: 50/45 Reuters/Zogby: 50/44 (%)   (11月3日)

ABC News : マケイン陣営がペンシルバニア州を最後の戦場として重視している理由は、他の幾つかの州を失っても、ここで勝てば、代議員数が多い為、逆転して過半数を獲得できるからだ。                   (11月4日)

FOX News :キャスターは、オバマの優勢を伝える中で、相変わらず、「ボストン・スラム街」に住むオバマ候補の叔母の「不法滞在」問題を衝いている。オバマが、「彼女は法を守って出国しなければならない」と述べたことを、「冷たい仕打ち」とコメントしている。オバマが大統領候補者として,そのように言わなければならないことを計算した上での挑発だ。ここに来て、「オバマ攻撃」の最後の切り札は、個人攻撃と、人種問題を強調することで、また、マケイン支持派としては,それしか残っていない。                   (11月4日)


投票日まで数時間を控えて、オバマ候補のハワイに住む祖母マデリン・ダナム(85)
が亡くなるという悲報が届く。彼の母親代わりになり、「家族の要」と彼が表現する人だった。   
 最後の遊説をしているオバマ候補の涙を拭う姿が見られた。  (11月4日)               
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FEN JAPAN : 解説者、オバマの「社会主義」は、税金も払わない貧しい者に、無料の教育、医療を施す一方、重税を課すことによって、中産階級を破壊する政策だ。このまま行くと、米国は,中南米のアルゼンチンみたいな国になってしまう、と激しく攻撃する。                     (11月4日)

最も早い投票結果:ニューハンプシャーの小さな町 Dixville Notch で、15対6票という開票結果をもって、オバマ候補がマケインを破る。ここは伝統的に共和党が勝ってきた地盤だ。米国一早い投票を行う選挙区として有名。(11月4日)

東部諸州の投票始まる。長い列に並ぶ人々、笑顔を見せながらも寒そう。最後の、最も正確とされる世論調査Daily/TIPP Poll に依ると、オバマ陣営は、51.5%、マケイン陣営は、42.4% という結果となった。(Los Angeles Times 11月4日)

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<開票始まる> 2008年11月5日

最重点ペンシルベニア州:65/34% でオバマ勝利の見通し,明らかになる。一方、
ジョージア州は、59/40%で、マケイン勝利の見通しとなる。

開票3時間後の情勢:オバマ候補は、東北部諸州で勝利を収め、代議員数200、マケイン候補は、予想通り、テキサス州など南部,中央部で強く、130人の代議員を獲得する。投票総数の比率は、50/49% で、オバマ氏がやや優勢。

フロリダ、ヴァージニアで接戦が続く。オバマ氏、アイオア、オハイオ、ニューメキシコを押さえる。

FOX News :オバマ候補が、第44代米国大統領に当選することが確定したと、全てのメディアの筆頭で伝える。代議員数は276から290人を獲得する模様とする。
                          (日本時間13:00PM)
カリフォルニア、オレゴン、ヴァージニア、フロリダがオバマに渡る。
ほぼ同時にABC Newsも、’Mr. President OBAMA’ の表示を出す。
代議員数  297/145 投票総数比率 51%対 48%        (13:05)

NHK BS ニュースも、ABCニュースの「オバマ当選確実」を伝える。(13:15)

間もなく、両候補の「敗北・勝利」演説が始まる。

マケイン敗北演説 :選挙中の激しさとは打って変わった落ち着いた口調で、オバマ候補の立派な闘い方を賞讃し、自己の「長い闘いの人生」が終ったことを、安堵感さえ湛えながら表明した。

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オバマ勝利演説:マケイン候補、そして「自分に投票しなかった」共和党支持者たちに、極めて配慮した演説だった。更には、夥しい数の、選挙運動を助けてくれたボランティアの人々に深く感謝する内容。多くの参加者が、喜びと感動の余り、涙を流していた。その中に、黒人解放運動指導者ジェシー・ジャクソン師が居た。

代議員獲得数:オバマ 338 マケイン 162
投票総数:62,419,768 (52%)  マケイン 55,368,713 (47%)  
(21:25)
民主党は、上院,下院選挙でも、新たに数議席を加え,安定多数を握る見通しとなった。

大統領選挙・当選者確定後も、ミズーリ、ノースカロライナ、インディアナの各州では、1%差で激戦続く。                   (22:30)



<注> 「記者会見」問題:ペイリン副大統領候補が、当初嫌っていた記者会見に応じる態度に変化したのに対して、共和党選挙本部が、「失言を重ねて笑い者になる」ことを怖れて、抑制させている対立を指す。
(2008.11.05)

<写真> ABC News, The New York Times, Washington Post, Chicago Tribune,
Los Angeles Times, The Times, The Guardian, The Daily Telegraph

<追記1>
 選挙結果から見て、大統領候補両氏の支持率差が5%に縮小したことは、直前世論調査の「7〜11%差」と較べると、驚くべき事実と言える。やはり、黒人候補への差別感情に基づく,一種の「ブラッドリー効果」が幾分か働いたと見るべきだろう。オバマ候補に投じるつもりで投票所に行って、最後の一瞬に臆してしまう有権者が相当数いたのであろう。オバマ氏が、最後の最後まで必死に訴え続けた理由がよく分る。
                            
<追記2>
 代議員獲得数:オバマ 349    マケイン 162人
 上院議員:民主党(D) 56 共和党(R) 40 下院議員:(D) 254 (R) 173 

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                             (2008.11.06)
by shin-yamakami16 | 2008-11-05 23:50 | Comments(0)