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by shin-yamakami16

足音高まる「世界恐慌」


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「近代経済学」は現事態に応えられるか?
                          山上 真

 世界的「経済・金融危機」を迎えて、各国首脳は、先ずワシントンでのG20首脳会議、次いでペルー・リマでのAPEC(アジア・太平洋首脳会議)と立て続けに危機への対応を図っている。しかしながら、現ブッシュ政権の制約を避けたい米国の次期大統領オバマ氏がG20に出席しなかったこともあって、この一連の国際会議の成果は,極めて限定的となった。そのことを裏付けるように、これら会議後の各国経済指標は、株価大幅下落など、軒並み低調なものとなった。これら会議で再確認された原則、即ち、今後も「自由競争に基づく市場主義」が、どのように機能するかということの深まった議論なしに再確認されるだけでは、深刻な不況に悩む一般社会にとって、到底納得し難いものだった。例えば、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、これらの会議の記事を、通常は第1面を飾る筈のものを、3ページ目に掲載するという扱いにした。

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 この最中に、オバマ氏は、米国自動車産業の危機が極めて深刻で、今後何百万の雇用が失われる恐れがあると言明した。メディアも、米国デトロイト、ミシガンで大規模人員整理が迫っていることを伝えている。次期民主党政権の下での、政府資金補給の意図が明らかになっているが、その効果が如何程のものか疑われている。米国車の生産コスト競争で、到底日本車に及ばず、機能性も早期の改善が望み薄だからである。そんな環境で、日本への関心が好い意味でも,悪い意味でも高まっているのも事実だ。先日のFOXラジオは、長時間に渉って、日本社会の特徴、地理、産業構造などを、非常に浅い知識しか持たない聴取者の質問に答えながら,説明していた。TOYOTA, HONDAなどの日本車の名称が頻繁に登場している。

 11月 22日には、株価暴落の煽りを受けて、米国大手銀行・シティグループが資金不足に陥り、投資会社か政府の多額資金援助を求めていることが明らかになった。もし破産することになれば、世界中の従業員35万人が路頭に迷うことになる。


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 早くも雪景色の英国では、雑貨・大スーパーマーケット 'Woolworths' が倒産の危機に陥っている。現経営者は、全国800店舗を僅か1ポンドで売り渡そうとしていると云う。3万人の雇用者が厳寒の中、「荒涼とした」クリスマスを迎えようとしているということだ。
 
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 このような事態に英国政府は、矢継ぎ早に緊急経済政策を発表している。ダーリング蔵相は、22日、VAT(付加価値税=消費税)を現行17.5%から、15%に下げる方針を示したと云う。それに依って消費を刺激し、経済活性化を図ろうとする。
他方では、'Northen Rock' や スコットランド銀行などの救済策で膨らむ一方の国家財政赤字への対策として、年収15万ポンド(約2200万円)以上の所得者の税を、40%から45%に引き上げる増税策を明らかにした。富裕層に重い負担を求めるこの政策は、ブレア前政権との「決定的な別離」を意味するということだ。
 
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しかしながら、こうした政策によっても、英国経済が好転するだろうと考える人は少ない。今年度の住宅差し押さえが45,000件に達するだろうとする予測を見ても、ますます深刻化する事態の見通しは暗い。

 ここ数十年間に渉って支配的だった「近代経済学」は、これら経済・金融危機に対して、どのような解決策、いや、少なくとも指針を持ち合わせているのだろうか。嘗て誇っていた学問的自信は、どこに行ってしまったのだろうか。金融商品「デリバティブ」などの流行語も、今や「損失」を象徴する言葉に化した。様々な新聞、雑誌類を見て回っても、事態の深刻化を強調する事実説明ばかりで、脱出策を吐露する論文を寡聞にして知らない。

 ドイツでは最近、カール・マルクスがよく読まれているという。これは、日本で
戦前のプロレタリア作家・小林多喜二の『蟹工船』が、若者たちを中心に読まれ始めていることと軌を一にしている動きと捉えてよいだろう。現代資本主義が齎した多岐にわたる惨状を、どのように正確に捉え、そこからの解決策を求める先は,他ならぬ「過去のもの」とされる古典に在るのかも知れない。
                        (2008.11.25)
 

<写真> The New York Times, Washington Post, The Times, The Daily Telegraph
The Guardian 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-11-25 22:36 | Comments(0)