世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「ムンバイ同時テロ」の意味するもの


 
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「アジア大乱」の予兆か?

                           山上 真
 
 11月27日にインド・ムンバイ(旧ボンベイ)で起きた連続テロは、60時間の惨劇の中、195人の死者と,約300人の負傷者を出して終息した。死者の中には、米国人6人を始めとして、英国人、日本人など外国人約10人が含まれていた。欧米、日本などの外国人が主として宿泊する二つの豪華ホテルが、10ヵ所に及ぶ攻撃拠点の中に含まれていたことは、このテロ事件の性格を如実に物語るものであろう。
 

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 20人以上の「ダッカ・ムジャヒディン」を名乗るテログループが周到な計画に基づいて、自動小銃、手榴弾を豊富に用意して,インド軍と長時間対峙したことは、世界に衝撃を与えた。インド当局によると、犯人らは、投獄されている仲間の解放を求めたということだが、事件の規模から見て,それだけの目的ではないことは明らかだ。彼らは「欧米人のパスポートを持つ者」を探し回ったそうだ。また、ユダヤ教拠点が攻撃目標になった。
 つまり、少なくとも一つの目的として、欧米・イスラエルをターゲットにしたということだ。
 インド政府は、このテロ事件の首謀者が、パキスタンから侵入してきたイスラム過激派であることを示唆する声明を出しているが、真相は未だ不明だ。


 
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 これまでにインドでは,何度か大きなテロ事件に見舞われた。今年だけに限っても、5月にインド北西部の観光地ジャイブールで発生した無差別テロ事件では、9件の連続爆発で、60人が死亡し、約100人が負傷した。ここでは、外国人の被害者は一人も居らず、経済的不満を持つグループが、インド政府の信用失墜を狙ったテロとされている。
 10月30日、北東部アッサム州で起きたテロ事件では、死者70人、負傷者470人に上った。ここでは、13回の爆発がほぼ同時に発生した。犯人は、イスラム過激派とされている。


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年率8%を超えるインフレの中、ヒンズー主流のインド社会の中でイスラム派は貧困、カースト(身分差別)が生きている社会、経済格差に対する不満を募らせている。加えて、イラク、アフガニスタンでの、米国・英国などのイスラム社会への直接的武力行使に対して、激しい憎悪を燃え上がらせていることもあるだろう。


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 最近は、インドへの日本企業進出の動きが著しいと云う。日本企業のインド国内の拠点数は今年1月の555ヵ所から、10月までに840ヵ所に急増した。ムンバイは先進国の金融機関が集まる「金融センター」になり、金融、商社、製薬などの企業が、120の拠点を置いているということだ。(朝日新聞11月28日)
 恐らく、日本企業のインドへの投資の激増は、昨年の「反日運動」などで中国市場の先行き不安が生まれ、企業が方向転換を図っている結果であろう。確かにインドのIT技術や、知的資源の魅力には抗えないものがある。しかし、ここでも、「テロの起こる土壌」という地政学的問題が潜んでいた。

 主観的に言えば、嘗てのインドは、世界の「非同盟運動」で指導的な役割を長期に渉って演じてきた「平和勢力」であった。しかし、現在は、ITなど科学技術でめざましい発展を遂げる一方、インド亜大陸で、米国の承認の下に核武装しつつ、同じく核武装国パキスタンとの覇権を争う「危ない国」になっている。ガンジーの「非暴力主義」や、ネルーの「平和主義」は一体どこへ行ってしまったのだろうか。
 

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 ムンバイでのテロ事件とほぼ同時に、タイ政権混乱による2空港閉鎖で、1万人の日本人が身動き出来なくなったと云う。ミャンマーの軍事政権の行方も不安定なままだ。中国政府による暴動鎮圧の後、チベット「独立」の方向が、抵抗勢力によって提起されている。インドネシア、フィリピンでのイスラム原理主義運動も依然として根強く続いている。「テロの元凶」とされるアフガニスタン戦争の帰趨も全く混迷状態だ。「アル・カーイダ」指導者ビン・ラディンの行方も掴めていない。
 こう見ると、アジア全体が今後の数年から十年の間に、激動期を迎える可能性を到底排除し難いことが理解できる。            (2008.11.30)


<追記> 英国・BBC Radio 4 は、イスラム過激派を批難するのはいいが、イラク、アフガンなど全世界で、米英軍がどれだけ多くの人々を殺してきたか、という事も考えるべきだという中年男性、及び女性の声を紹介していた。ガザで、パレスチナ人に対する無差別攻撃を続けるイスラエルも、テロリストと変わらないじゃないか、という声も別の男性の意見だった。(11月29日,15:24)
  

<写真> The Guardian, The Daily Telegraph, The Times, Le Monde
Commented by 鯱美 at 2008-12-05 23:28 x
宗教ほどやっかいなものはありませんね。。。

中東戦争で、イラン、パレスチナ、アフガンの人々は、イスラエルの地(約束の地)を追われた恥辱と積年の恨みを
今でも忘れていないのでしょう。

神でもないアメリカに地を奪われた。

・アメリカによって建国されたイスラエルが、インドと軍事協力関係になろうとしたこと。
・そのインドと日本が経済協力をしようとしたこと。

この2点が今回のテロの原因であるのはあきらかでしょうけど、
この日本が巻き込まれるのは非常にマズい状況。

平和ボケした日本に、危機回避能力が未だ残っているかどうか。。。

戦争の発端は、小さな小競り合いからでもあります。
日本とインドの蜜月関係を考えると、いつ戦争が起こってもおかしくない
嫌な緊張を感じます。。。
Commented by shin-yamakami16 at 2008-12-06 09:27
コメント有難うございます。ジョン・レノンが歌っているように、宗教や国境なき世界が本当に幸せな世界のように思われます。
日本は、いつも、目先の経済的進出を念頭に置いた動きをしていますが、「非核・平和主義」というような大原則に基づいた外交政策を構築するベきと思います。
by shin-yamakami16 | 2008-11-30 14:08 | Comments(2)