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by shin-yamakami16

オバマ新政権の顔ぶれと 'Change' 展望

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旧クリントン政権との違いは?

                            山上 真

 次期米大統領バラック・オバマ氏は、各方面との慎重な協議を重ねつつ,矢継ぎ早に政権ポストを指名・発表している。その顔ぶれから見て、大方は、性急な変革よりも、実務的政策遂行を重視した、安定志向の政権運営を目指したものと受け止めている。

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        首席補佐官ラーム・エマニュエル氏とオバマ氏

 12月5日付の英国・保守系『タイムズ』紙上で、米国出身のコラムニストGerard Baker 氏 は、そうした見方とはかなり異なる観測を公にしているので、ここに紹介しておきたい。
 
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 「オバマは、先ず、これまでの民主党内の政敵だった人物を選んだ。副大統領に老練の ジョー・バイデン, 国務長官にヒラリー・クリントン、そして、元国連大使を務め、クリントン政権ではエネルギー問題担当相で、現ニュー・メキシコ州知事のビル・リチャードソンを商務長官に選んだ」
 
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              ビル・リチャードソン氏

 「次に、過去75年間で最悪とされる混乱から脱出する為の方策を練る経済担当チームとして、『ロバート・ルービン組』が出場することになった。ゴールドマン・ザッククス証券のトップ出身、クリントン政権の財務長官で、市場原理主義・規制緩和主義者のルービン氏は、如何にも新政権に不似合いなのだが、オバマ氏は彼を選んだ」

 「ラリー・サマーズ氏は1999年に、ルービン財務長官の仕事を引き継いだ人物であるが、今度は、ホワイトハウスの首席経済顧問に就くことになった。やはり、ルービン氏の「お気に入り」のティム・ガイトナー氏が、財務長官を担うことになったが、彼は、連邦準備制度議長ベン・バーナンキ氏、現財務長官ヘンリー・ポールソン氏と共に、これまで金融危機への対応策を導いてきた人物だ」

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              ティム・ガイトナー氏

 「第3のグループは、民主党とは距離を措く人々だが、非イデオロギー的で、中立的テクノクラート(技術官僚)である。現国防長官ロバート・ゲイツ氏は留任、そして、海軍大将、NATO軍司令官だったジェームズ・ジョーンズ氏は国家安全保障顧問となった。彼らはマケイン氏が大統領になった場合にも、同じ職務に就いた可能性がある」

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              ロバート・ゲイツ現国防長官

 「これまでの所、真のオバマ主義者は誰も重職に就いていない。強いて言えば、国連大使に任命されたスーザン・ライス女史がいるが、彼女は政策立案者ではない」
 
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              スーザン・ライス女史

 「こうしたオバマ氏の選択は、選挙中に約束されたものとは大分異なるという懸念が生まれているが、これは、オバマ氏の『意外な臆病さ』を示すものでは全くなく、彼が追従的人物に取り巻かれず、如何に自信に満ちているかを示すものだ。彼は,見慣れたスタッフたちを巧みに操って、ブッシュ時代、クリントン時代とはまるで異なる方向に導いて行くであろう」

 「特に経済分野では、1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領、1979年に英国でマーガレット・サッチャー首相がやったのと同様な規模の変革が起こる可能性がある。それは、指導力と環境要素の組み合わせに依るものだ。オバマ氏は、他のどの名士も持ち合わせていない真の指導力によって、変革を実行に移す機会を手中にしているのだ」

 これを書いたベーカー氏は、米国大統領選挙中は、オバマ氏の対立候補者マケイン氏を支持していただけに、このコラムでの同氏の主張には,注目に価するものがある。
 
 12月3日付のUSA Today紙は、オバマ氏の政権移行作業への支持率が、78%に達すると発表している。
 12月4日の Gallup 世論調査では、オバマ氏の組閣姿勢を支持している割合は、65%に及び、歴代大統領の中でも最高だということだ。不支持率は、26%まで落ちている。海外での評判も極めて高い。

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           フランス週刊誌『リベラシオン』

 しかし、オバマ支持者は「騙された」と、FOX Radio Newsがしきりに云う。新政権が、現在も抵抗勢力の攻撃が続くイラク情勢を考慮して、米軍撤退時期を遅らせるという現実的対応をする方針に転じていることについて、オバマ氏の「早期撤退」の約束を、「反故」にしようとしているとの批判が高まっているとする。  (12月5日)

  外交面で、すでにオバマ色が出始めている。ウクライナ、グルジアのNATO加盟を、米国が支持していた姿勢を保留している。東欧へのミサイル配備計画も見直されるようだ。ロシア大統領メドベージェフ氏は、この米国東欧政策の変化を歓迎しており、ロシアとの戦略対話が容易になる可能性がある。
 
 環境政策も大きな変化を期待できる。前政権が参加を拒んできた、地球規模のCO2削減の為の「京都議定書」協議に、復帰する可能性がある。これによって、米国の国際的威信は、飛躍的に高まるだろう。

  人権問題では,早期に大変化が現れるだろう。例えば、国際人権擁護団体『アムネスティ・インターナショナル』が、次に示すような声明を出している。

米国 : オバマ次期大統領のグアンタナモ収容所閉鎖発言を歓迎

 昨日のCBSのインタビューで、グアンタナモ収容所を閉鎖するという公約を守ると語った次期米大統領の発言は、正しい方向に向けた重要な一歩であると、本日、アムネスティ・インターナショナルは語った。

「グアンタナモ収容所を閉鎖し、米当局が拷問を採用しないことを保証する意向をオバマ次期大統領が確約したことをアムネスティは歓迎する。1月、大統領に就任した後に、自ら主導権を取り、米当局による国際法に反したすべての拘禁と尋問を中止することを最優先するよう要請する」と、アムネスティ米国調査員ロブ・フレアは述べた。

「我々は、オバマ次期大統領が就任100日以内に公約を実行に移すこと、そして国際法で定義されたような拷問や虐待を禁止する大統領令に署名するなど、米国が国際的義務を果たすということを自身の行動で示すことを求める。」

「ジョージ・W.ブッシュ大統領も、米政府は拷問を用いないと語った。しかし、CIAの秘密収容所に拘禁されている人びとに対する「水責め」やその他の「強化された尋問テクニック」の採用、またアフガニスタン、イラク、グアンタナモに拘禁されている人びとに対する拷問や虐待は、その言葉とは違う事実を物語ってきた。これらは、米政府が拷問やその他の違法な行為を国家安全保障の名の下で正当化し許可してきたという、悲劇的で懸念すべき事実を明らかにしている」と、ロブ・フレアは語った。

「テロとの戦い」において米当局が行ってきた拘禁と尋問のあらゆる側面を調査する独立委員会を支持するよう、またそれによる人権侵害に対し完全な説明責任を果たすよう、アムネスティは次期大統領に求める。
アムネスティはオバマ次期大統領に書簡を送り、グアンタナモ収容所の閉鎖、拷問の中止、調査委員会に対する支持が就任100日以内に優先すべき課題とすることを確約するよう要請した。

アムネスティ発表国際ニュース
2008年11月17日
                           (2008.12.06)

<追記>
 次期大統領オバマ氏は、12月6日、11月中だけで雇用が533,000件失われ、失業率が6.7%に達したことを受けて、大規模な公共事業を展開して雇用を確保する計画を発表した。その内容は、公共建築物を省エネ型に建て替えること、高速道路を改修すること、老朽化した校舎を改装すること、学級にコンピュータを配備すること、高速インターネット網を米国全域に配備すること、電子医療記録を使えるようにすることによって病院を近代化することなどである。こうした施策によって250万人の雇用を創出しようとする計画だ。この為の投資額は6000億ドル(55兆2千億円)に上る。
 
<写真> Washington Post, BBC News 掲載のもの
Commented by 鯱美 at 2008-12-16 03:40 x
グアンタナモ収容所が事実上閉鎖されても、第二、第三のアブグレイブやグアンタナモは秘密裏に出現することでしょう。

アメリカは、脅しが得意ですから。

今や虚しく響く言葉ですが、覇権国家としての面目を保つために、これまでよりも一層
こうした虐待は地下に埋もれつつ陰湿になって行きそうな気がします。

そもそも捕虜に対する拷問は、ずっと以前から国際法で禁止されたいるはず。
それを今更ながらに繰り返さなければならないほど、米軍は秩序が乱れ
兵士がどれほど抑圧されているかを物語っていると思います。

嘆かわしいことです。
Commented by shin-yamakami16 at 2008-12-16 09:17
秘密の収容所は、米国軍部によって、世界各地の基地で維持される恐れがありますね。軍隊組織というものは、不可避的に、拷問施設を必要とするのでしょう。このことを、新オバマ政権が、どう処理、清算できるかを注目しています。
by shin-yamakami16 | 2008-12-06 11:28 | Comments(2)